2016-08-23
yenta開発責任者の岡です。
先日、yentaユーザー限定のパネルディスカッション+交流会イベントを開催させていただき、非常に多くの学びがあったので、ブログとして公開させていただきたいと思います。
株式会社シロク、株式会社ハシゴ 代表取締役社長
2012年入社。学生時代に写真共有アプリ「My365」を開発、サイバーエージェント内定者の時に子会社として株式会社シロク設立、代表取締役社長就任。2014年11月より株式会社ハシゴ代表取締役社長。2015年7月より、サイバーエージェント内新規事業研究会責任者。
株式会社DeNA オートモーティブ事業部 Anyca事業責任者。
2012年4月にDeNA新卒入社。最初の2年間は韓国ゲーム事業に関わっていてソウルオフィスにもいたりしました。3年目から新規事業系の部署になり、今はAnycaの提案・立ち上げをやっています。
2012年1月に株式会社Speeeに中途入社。SEOサービスのディレクター、新卒採用担当を経て、全社MVPの受賞も経験。自ら事業企画を担ったイエウールの事業責任者を務め、リリース1年半で業界No.1サービスへ。現在は、不動産関連事業を中心に複数の事業を統括。
2007年にアトラエの新卒一期生として入社後、転職サイトGreenの立ち上げの新規営業として3年間従事した後、エンジニアに転向して復数の新規事業を開発して事業責任者を務め、現在はCTO兼新規事業統括としてTalentBaseやyentaの責任者を務める。
サイバーエージェント(CA)、DeNA、Speeeの3社は、私が知る中でも最も新規事業創出に力を入れている会社であり、新規事業を生み出すことにより企業ブランドを向上させ、継続的な成長を続けている会社である。
そんな3社の中で、中核メンバーとして新規事業を生み出し、グロースさせている3名に、できる限り具体的な社内での取り組みや新規事業を生み出せる秘訣を聞いてみた。
まず、Anycaの大見さんに事業を生み出すプロセスを聞いたところ、驚くほど気持ちのいい答えが帰ってきた。
「うちはトップダウンですね」(会場:笑)
もちろん、ボトムから新規事業を提案できるチャネルは用意しているけど、結果的に立ち上がっている、または投資している事業はトップダウンで決まったものがほとんどらしい。
DeNAの事業ポートフォリオに起因していて、既存事業の規模が大きすぎるため、現在取り組んでいる「オートモーティブ」「ヘルスケア」などのように市場規模の大きな領域に投資する必要がある。
このレイヤーの事業をボトムアップで提案させるのは現実的ではないし、さすがにトップダウンでしか決められない。
ただ、大きな勝負もしつつ、キュレーションメディアなどの短期で勝負ができる事業への投資も怠らずに、バランスの良いポートフォリオを構築しているのもDeNAの強さの秘訣かもしれない。
次はサイバーエージェントの飯塚さん。
サイバーエージェントで有名な「ジギョつく」ですが、実はそこから立上って今も残っているものは一つもないとのこと。
原因は一つとは言い切れないが、「ジギョつく」のようなコンテスト形式の事業創出イベントにすると、どうしてもお祭り要素が強くなり、事業を生み出す”本気度"よりコンテストに勝ちたいという"イベント"要素が強くなってしまうらしい。
当然、ジギョつくから立ち上がった事業はたくさんあり、優勝した人が責任者を任されるため、任された人がすごく成長する。
そういう人材育成という意味では価値のある取り組みだったが、”本気”で事業を生み出すという意味では問題があったので、「ジギョつく」は廃止し、新しい取り組みを進めているとのこと。
ジギョつくが終了して、新しく作られてた新規事業創出の仕組み「NABRA」の責任者を務める飯塚さん。
「NABRA」はサイバーエージェントグループ全体から集められた精鋭10人で構成されており、定期的に新規事業に関するディスカッションを行っているとのこと。
今までのように、任意の希望者でアイデアを競うのではなく、集められた少数精鋭で”本気”になれる事業を模索し、新たな事業を生み出そうと走りだしたところ。
NABRAが今後のサイバーエージェントの成長にどう寄与してくるかに注目したいところ。
ここで、先ほどトップダウンと断言していたAnycaの大見さんが、ボトムアップの取り組みについても話してくれた。
「大きな市場の新規事業への投資という意味ではトップダウンにならざるを得ない部分もありますが、別の領域ではボトムアップで新規事業を開発していく取り組みも、実は積極的にやってます。元mixiの原田がリーダーになった新サービス量産チームがあって、少人数でリーンな開発を繰り返しながらコミュニケーションアプリとか軽めのアプリを開発していて、未来のinstagram / LINE / snapchatになるようなアプリを開発してます。」
最近は、大きな領域への投資が目立っているDeNAだが、少数精鋭でスタートアップさながらの新規事業開発を行っているという話を聞いて、大きな勝負と小さいが高速な勝負をバランスよくやっていることが伺えた。
今後もDeNAの動きや成長に注目したいところ。
Speeeの岡崎さんは、社内での新規事業の位置づけについてこう語る。
「うちの場合は、まだ確固たる既存事業を持っていないと認識していて、このままではダメだという危機感を会社全体として持っているので、新規事業は全社的に投資するという意識でいます。」
他の2社に比べて、早いフェーズにいるSpeeeの場合、会社の枠を引き伸ばしてくれるような事業を生み出すことが"必須"であるという認識を持ち、新規事業に対して独特で驚くような取り組み方をしている。以下にその取り組みの一部を紹介する。
「うちのようなフェーズだと、可能性のある領域に"全張り"というわけにはいかない。張れるとしても2,3個の領域に限定されるので、その領域を徹底的に調べ尽くしますね。」
さらにその領域の選び方についてこう語ってくれた。
「うちは主にtoC向けの新規事業の立ち上げに苦戦してきたという過去の経験もあって、やっぱり”うちらしさ”がある事業じゃないとやりきれないという結論に至り、現在は”らしさ”を感じられる領域に絞ってますね。」
この点は他の2社とは大きく異なる興味深いポイントだと思う。
限られたリソースで、会社の枠を拡げるような事業を立ち上げるということは、当然簡単なことではない。努力だけではなく運も必要になってくる。
ただ、だからといって諦めるわけではなく、簡単なことではないことをやり切るための方法として、”らしさ”のある領域に絞り徹底的に調べあげることにより、事業を立ち上げてきた岡崎さんの話は非常に興味深かった。
新規事業を考え、検証し、立ち上げるプロセスは人によって異なります。
例えていうならば、新曲を生み出すアーティストのようなもので、鼻歌で作り上げる人もいれば、科学的に音楽を作り上げる人もいる。
岡崎さんは、ここでいう科学的に事業を生み出すという方法で、イエウールやヌリカエを生み出してきた。
「例えば、イエウールを立ち上げるときは、"不動産"領域を徹底的に調べあげます。めちゃくちゃ調べると不動産業界の"年表"のようなものが出来上がるんです。年表ができるレベルに調べあげると、不動産業界が過去どのようなスピードでどのように変化してきたかが分かってくる。”歴史”を知り尽くすことによって、不動産業界の”未来”が少し見えるようになるんです。」
この話は、成長途中のスタートアップやベンチャー企業で新規事業の立ち上げに関わっている人にはとても価値のある話だと思う。
言われてみれば簡単に聞こえるが、ここまで調べあげ、それを新規事業に繋げることは、簡単なことではないはず。
後編では、「新規事業のチームの作り方」や「グロースの方法」などについてまとめていきます!